前回、コンボデッキにおいて確実性と速さを比べた場合についてご指摘をいただいたので少し掘り下げてみます。
コンボデッキには様々な種類があるので議論がどうしても一般的なものにとどまってしまう。
ということでデッキを限定します。
デッキはANT。
質問してくださった方が愛しているデッキです。
自分も好きですが、ターミネーターは毒殺のほうが好きみたいです。(←実際強いですよ)

閑話休題。。
そもそも、コンボデッキが勝利するためにはコンボを決めきる必要がある。
つまり、コンボデッキにとって勝つために必要な初期手札はコンボを決めきる可能性が高い手札ということになる。

まずはライフの観点から。

コンボデッキの場合、往々にしてダメージ許容量(どれだけのダメージを受けても平気か=どのくらいライフが残っていればコンボを安全に発動させ、勝利できるか?というライフ値)が存在する。
(なお、High Tideではダメージ許容量が高い。だから対策が無いZoo等に対しては非常に強い。Hive Mindも集団意識ルートの場合は同じ)

ANTはダメージ許容量は比較的低い。
つまり、ダメージを受ける前にコンボを発動させることが確実性につながり、それは多くの場合は早いターンで決めることである。
結局、早期決着の初期手札こそが高い確実性を持つ。
教科書的に書けば、多くの場合は早いことは確実性の十分条件である。しかし、逆は成り立たない。
なに??
その時のための不正利得/Ill-Gotten Gainsルートがあるって?
確かに。でもね・・・・・・
ライフが少ない時は不正利得/Ill-Gotten Gainsルートに変更すればいいじゃん!
ってなわけにはいかないわけですよ。

理由は下記。

①不正利得/Ill-Gotten Gainsルートをとるためにはむかつき/Ad Nauseamルートよりも良い手札である事が必要である。
つまり、自由に変更できるものではないということ。(両方可能ならアド死の無い不正利得/Ill-Gotten Gainsルートのほうが好まれる)

②不正利得/Ill-Gotten Gainsルートは墓地を経由する=墓地対策カードに引っかかりやすくなる→確実性低下

以上の二点が出てくる。

②に関しては確実性を重視し、アド死しないために不正利得/Ill-Gotten Gainsルートを選択したにもかかわらず、相手の介入を自分から許すことにより確実性を低下させるという矛盾をはらんでいる。

不正利得/Ill-Gotten Gainsルートがいかに相手の干渉を受けやすいかということを説明するためには、なぜANTというデッキがIGGy-POPよりも成功し、環境におけるトップメタまで上り詰めたかの理由を考えれば一目瞭然だ。
ANTの歴史は面白い。簡単に説明すると、IGGy-POPはANTの不正利得/Ill-Gotten GainsルートによりStormを稼ぐデッキであり、そこにむかつき/Ad Nauseamを手に入れたことにより、むかつき/Ad NauseamをキーカードとするANTとなった。
そして墓地対策に弱いため墓地を使わないANTのほうがよりコンボを決めやすく、繁栄した。
すなわち、不正利得/Ill-Gotten Gainsルートは意外むかつき/Ad Nauseamルートに比べ、相手が何らかのアクションキューを持っていると脆いという事だ。
詳しく言うと不正利得/Ill-Gotten Gainsルートは墓地対策で一瞬にして沈むため、それらを考慮すると確実であるとは言えない。もし、不正利得/Ill-Gotten Gainsルートのほうが確実であるならばANTよりも好成績を収め、今のLegacy環境でも猛威をふるっているはずであるが、そうなっていないということは不正利得/Ill-Gotten Gainsルートが確実性に劣るということを示唆していると考えられないだろうか。

言いかえれば、相手に干渉されないように、つまり確実性を高めるためにはなるべくむかつき/Ad Nauseamルートをライフが多い段階で打つのが最も確実ということになる。

加えて、①の要素もあり、不正利得/Ill-Gotten Gainsルートは安定しない。IGGy-POPがANTほど安定しなかったのはこの不安定性も足を引っ張っていると思う。
ANTはむかつき/Ad Nauseamを唱えればコンボスタートであり、ほぼフィニッシュまで持っていけるが、IGGy-POPでは早い段階だとStorm数が足りず、動けない。
墓地対策なんか置かれた日には対策カードサーチのために時間を取られ、目も当てられない。
となると相手に敗北する機会が多くなる。
されにダメ押しすると、相手のカウンターをせっかく手札破壊で落としても、回収されてしまう・・・・・
お気づきだろうか?
ここでも「コンボ完成までの早さ」が勝利への確実性へとつながっていることに。

ちなみに、ではなぜANTにおいて不正利得/Ill-Gotten Gainsルートが使用可能かというと、普通に考えてANTに対してまずケアすべきことはむかつき/Ad Nauseamであり、その分不正利得/Ill-Gotten Gainsに対する対策(=墓地対策)が甘くなってしまう。
純粋にむかつき/Ad Nauseamから不正利得/Ill-Gotten Gainsに絡めてStorm数稼ぎに使えることも大きい。
不正利得/Ill-Gotten Gainsよりも「早い」むかつき/Ad Nauseumに対してケアを集中させざるを得ないことによって不正利得/Ill-Gotten Gainsが生きているのだ。
コンボ完成までの早さはこの視点から見ても重要であると言える。
そして、このように二つのルートを持つことがANTの強さの一つである。

お次はターミネーターも言っていたように対策カードと相手のアクションについて。

まず、対策カードについてはANTのサイドボードの話題が良く上がっているようだが、もう少し系統的に詳しく議論する必要があると思う。
翻弄する魔道士と虚空の杯/Chalice of the Voidそして精神壊しの罠/Mindbreak Trapは同列に扱っていい対策カードではないと思う・・・・。
まあ、それは後にして。

多くの場合、コンボを決めるターン数が多くなる=相手の土地が増える→マナが使える
であり、より多くのアクションをとれるようになってしまう。
また、パーマネントによる対策の場合、より多くの対策カードが展開されてしまう。
となると、それらに対応するためにANT側も対策カードを使う必要があり、コンボに使用出来るカードは少なくなる。
このことはANTにおいて不正利得/Ill-Gotten Gainsルートが扱いづらくなることを意味する。(①参照)
つまり、Stormで決めるならばむかつき/Ad Nauseumルートのほうが必然的に多くなる。
が、ターン数が多くなるとライフも削られる→むかつき/Ad Nauseumルートの確実性が落ちる。
つまり、「早期決着が一番」ということになる。
対策カードもなるべく使われないうちに倒す→なるべく早めに決着。という実に単純な考え。
それが出来たらみんなしているが、とにかくターンがたつごとにクロックパーミッション・Zoo等を相手にしている時はANT側に対しては不利になる。
とくにカウンターを持つ相手の場合は1ターン中に複数のカウンターを唱えられるようになってしまうのは正直つらい。

最近は闇の腹心/Dark Confidantをサイドから投入する場合もあるが、それで勝てる相手はミラーマッチかクロックを捨てたコンボ系である。
実際、暗黒波/Dark Blast一枚で止まることが多い。(Vintageでは特にあり得る)

対策カードの面からみても、相手に展開される前、カウンターが唱えられるようになる前に決着をつけることが確実性を上げることになるとご理解いただけただろうか?

もちろん、パーミッション相手に静寂/Silenceを持っており、タイミングを伺っている場合などは機会をみて行動したほうがいいなど、そういった状況もあるかもしれない。
しかし、それでも早い段階に決めるに越したことはない。

はっきり言って確実に決まるならその方法が一番良いに決まっている。しかし、確実に決まるなんてわからない。
となれば、待つか、早く決めに行くかの選択になる。
個人としては、上記のようなことから早い手札が確実性のある手札につながることが多く、コンボデッキに関してはコンボ完成スピードが確実性の目安にもなると思う。
つまり、コンボのキープ基準はコンボ完成までの早さが重視されるべきであるという意見になります。

なお、こういった考え方にはいろいろな視点、捉え方があり、自分の考えがすべてでは無いと思っているので他にもたくさん意見が出ると思います。
自分の意見以外も知りたいので、そういった意見があれば是非、教えてほしいです。
今回は指摘していただいた倉成さん、ありがとうございました。

コメント

倉成
2011年10月17日20:09

参考になる意見です。

自分と解釈が若干食い違った理由がなんとなくわかりましたが、
前々回のエントリーで疑問に感じたのが、速度重視 NOT= 確実性にとれたためです。

具体的には思案・独楽・BS・フェッチです。

コンボパーツか妨害枠かマナ加速かは置いておいておきますが。
私見では確実性と速度を同時に手に入れるために忘れてはならない重要な要素に、
「不確実要素の排除・速度の底上げ=何枚のライブラリー操作を行えるか」
言い換えれば1ゲームで何枚のカードを選択肢として用意できるかに尽きると思ってます。

ゲームプランとして考えるなら前方確認つきの最速かつ最も安全なルートに勝ちにいけるのが理想だと思いますが、ドローソースの有無が速度・確実性に与える影響が強いのでキープの基準足り得ると思うんですよね。

以前コメントで序盤のゲームプランの見通しとか、ぶっぱなしハンドがうんたらかんたらというのがそういう意味で書いたものです。お互い全く触れてなかったので共通認識だと勘違いしてました。

ANTにおける「コンボ完成までの速度 = 確実性」 とドローソースの有無をどこまでキープ基準と考えるか、意見を聞きたいところです。

MUD/STAX
2011年10月17日23:53

>>倉成さん
恐縮です!
論点がズレていたようで申し訳ありませんでした。
求めるのは確実な勝利という事は変わりないと思っています。
お世辞でも何でもなく、ANTのキープ基準に関しては倉成さんの方がしっかりとしたことをかけると思うんですがどうでしょう???
書き込んでおいて何なのですが、ANTをしっかりと使い込んでいる方に対しては恐れ多い・・・・
むしろ、釈迦に説法になるかと。

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